
同じ鉢に真白鈍色うちまぜて三つ四つ二つ咲ける朝顔

夢さめて先つ開き見る新聞の豫報に晴れとあるをよろこぶ

おくり物牡丹の花の紅に草の庵は光立ちけり

人丸の後の歌よみは誰かあらん征夷大将軍みなもとの実朝

たまたまに障子をあけてなかむれば空うららかに鳥飛びわたる

朝ながめ夕ながめして我庭の菊の花咲く待てば久しも

カラス戸の外に咲きたる菊の花雨に風にも我見つるかも

人にして鳥にありせば妹と二人空舞ひかけり舞ひかけりせな

フランスの人がつくりしビードロの一輪さしに椿ふさはず

歌よみに与ふる書

再び歌よみに与ふる書

九つの人九つの場をしめてベースボールの始まらんとす

うちあぐるボールは高く雲に入りて又落ち來る人の手の中に

うちはづす球キャッチャーの手に在りてベースを人の行きぞわづらふ

國人ととつ國人とうちきそふベースボールを見ればゆゆしも

九つの人九つのあらそひにベースボールの今日も暮れけり

なかなかにうちあげたるは危かり草行く球のとどまらなくに

若人のすなる遊びはさはにあれどベースボールに如く者はあらじ

足なへの病いゆてふ伊豫の湯に飛びても行かな鷺にあらませは

吉原の太鼓聞えて更くる夜にひとり俳句を分類すわれ

四年寐て一たびたてば木も草も皆眼の下に花咲きにけり

臥しながら雨戸あけさせ朝日照る上野の森のリをよろこぶ

目をさまし見れば二日の雨リれてしめりし庭に日の照るうれし

ガラス玉に金魚を十ばかり入れて机の上に置いてある。
余は痛をこらへながら病床からつくづくと見て居る。
痛い事も痛いが綺麗な事も綺麗ぢゃ。

あら玉の年のはじめの七草を籠に植ゑて來し病めるわがため

瓶にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり

藤なみの花の紫繪にかかばこき紫にかくべかりけり

夕顔の棚つくらんと思へども秋待ちがてぬ我いのちかも